横浜高校野球部監督・渡辺元智氏ゲスト講義

平成22年12月3日(金)、「スポーツと科学」(小山啓太講師担当)のゲスト講師として、横浜高校硬式野球部監督の渡辺元智先生に登壇していただきました。

渡辺先生は1965年に母校・横浜高校野球部のコーチに、69年に同監督に就任されました。73年のセンバツで初出場初優勝したのを皮切りに、70年代から2000年代まですべての年代で全国制覇を成し遂げた唯一の指導者です(優勝5回、準優勝1回)。98年には松坂大輔投手を擁して、明治神宮大会、春・夏甲子園大会、国民体育大会のすべての全国大会優勝を含め、長い高校球史上唯一の年間公式戦無敗を記録しました。また、今日までの45年間の指導歴の中で、愛甲猛(ロッテ)、鈴木尚典(横浜)、多村仁(ソフトバンク)、松坂大輔(レッドソックス)、成瀬善久(ロッテ)、涌井秀章(西武)など52名のプロ野球選手を輩出された、高校球界を代表する名監督です。本学硬式野球部にも、黒葛原祥(2010年本学卒業、現・日立製作所)、橋本達也(2010年本学卒業)、越前一樹(法学部4年、NTT東日本内定)、落司雄紀(法学部3年)と甲子園でも活躍した有力選手を送ってくれています。

講義では、成功と挫折と克服をくりかえしてきた過去を率直にふりかえっていただきました。すなわち、①根性野球(日本一長く厳しい練習)を実践して20代でセンバツに優勝してふんぞり返ったが、その後パタッと勝てなくなり、想えばあれは選手のためではなく自分の欲望のためであって、指導理念なるものもなかった、②そこで野球を一から勉強しなおし、指導者として選手とコミュニケーションをとりながら選手の心をつかむ努力をし、愛甲猛投手を擁して夏に優勝したが、その後またふるわなくなった、③そこで今度はアメリカ野球を勉強するためアメリカへ渡り、同国のアマチュア野球史上最高の監督に教えを乞うたり、ハングリー精神をもった選手たちが個人練習で日本と比較にならないほど凄い(しかし楽しく)練習をしているのをみて刺激を受けるなどして、アメリカで学んだことを日本に持ち帰って勝てたが、しばらくするとまたまた勝てなくなった、④そうして小倉部長を抜擢し、二人三脚で横高野球の基盤を強固にし、さらに、異業種・異分野の方々とも積極的に会って、かれらから野球にも通じる多くのことを学びながら、野球というものを立体的・多面的に見たり、固定観念にとらわれないようになった、などです。要するに、一般のイメージとは異なって、名監督の渡辺先生でさえ、紆余曲折、試行錯誤、栄光と苦悩の連続の中で、常に現状を反省し、新しい戦略や目標を立て、必死に適応・実現してこられたわけです。

「嫌いなものにチャレンジすることが大事。何でも残さず食べることはもとより、嫌いな授業をきちんと受けることも野球につながる」「『野球だ、野球だ』と野球のことばかり考えさせたり、『ダメだ、ダメだ』とネガティヴな面ばかり指導したりしていたときは、結局うまくいかなかった」「時代の変化とともに、指導者も変わらなきゃいけない。選手とのコミュニケーションに必要なら、携帯メールも使う」「これからの指導者余生としては、本当にうれしいな、楽しいなという野球をやり、そういう思いをさせてあげたい」「『運[果報]は寝て待て』じゃなく、練って待つものだ」など、ご自身の経験に裏づけられた、確かな重みのあるメッセージを頂戴しました。また、松坂大輔選手、涌井秀章選手、俳優の上地雄輔さんなどの楽しいエピソードも紹介していただきました。

なお、この講義中、ずっと姿勢を正してまっすぐに渡辺先生の話に耳を傾けるひとりの硬式野球部員の姿がありました。横浜高校で3年間渡辺先生の指導を受けた、上掲の落司雄紀君です。質疑応答の際、かれがケガに苦しんできた現状と将来への不安を吐露すると、先生は「人間あきらめたら終わり。あきらめたらプロはおろか他の職業でも通用しない。あきらめないで最後までやってみることが大事。そうしたら、かならず他のことでもそれが生きてくるから」と、かつての教え子に厳しくも暖かいアドバイスを送られました。いまもかわらぬ師弟のシンクロには、胸が熱くなるものがありました。

 渡辺先生、心に響く確かなご講義をありがとうございました。そしてこれからも、横浜高校から多くのよい選手・学生が本学に来てくれることを楽しみに致しております。

左より落司雄紀(横浜)、渡辺元智先生、新主将の三國龍大(智辯学園)

左より落司雄紀(横浜)、渡辺元智先生、新主将の三國龍大(智辯学園)

◎横浜高校ウェブサイト
http://www.yokohama-jsh.ac.jp/senior/
◎渡辺元智先生の高著
・『もっと自分を好きになれ!―ドタン場の勝負を支える本当に強い心とは』(青春出版社)
・『若者との接し方――デキない子どもの育成力』(角川書店)
・『ひたむきに――松坂大輔”超一流”への道』(双葉社)
・『わが人生 いつも滑り込みセ-フ』(神奈川新聞社)
など多数

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